頼朝おそるべし − 迫真の政治ドキュメンタリーおすすめ度
★★★★☆
今日から見れば予定調和的に見える歴史的イベントが、当時の人々にとって如何に大きなインパクトを持っていたか、その追体験を試みるのは歴史を学ぶ醍醐味のひとつであり、そうした観点からそれぞれの出来事を活き活きと描き、時代の歴史的な雰囲気を醸し出すことに成功している本というのは貴重です。
本書は、鎌倉軍事政権を体制外権力的なものの発展と捉え、頼朝が公的支配の論理と私的主従結合の論理の中で揺れ動きつつも、やがて体制の中で絶妙の定位を確立していく姿をうまく描き出しています。そして、関東独立、ひいては中央統治体制の打倒といった選択肢が、如何に現実的で緊迫感を持つ可能性であったか、いわば政治学的な視点からあたかもドキュメンタリー仕立てのように、活き活きと語られています。「鎌倉殿の誕生」という副題も、このような観点から大変よく練られているといえます。
最近読んだ日本中世史関係の本の中では最も上出来だったので、星5つにしようかとも考えましたが、もともと小生はこの分野に明るい方ではなく、本書の迫力が著者の腕によるものなのか、それとも頼朝自身の政治家としての偉大さによるものなのかよく分からないので、取り敢えず4つにさせて頂きました。
概要
東国における反乱勢力として出発し日本初の武家政権を確立した鎌倉殿・源頼朝。
お手本なき時代に自己の権威をいかに磨いたか。京の朝廷に対する距離の取り方が意味するものとは? そして源平合戦、義仲・義経との内乱期に見せた巧みな政治的手腕とは?
以仁王の令旨を継ぐ正統性の主張、坂東武士の主従の論理、そして王朝に対して時折示す簒奪政権としての武の脅威……。これらを使い分け、カリスマ性と「正義の戦い」を巧みに演出することで、自己の権威に磨きをかけ、武のシステムを日本に築き上げた。
本書では、源平争乱から奥州合戦に至る最も濃密な十年、つまり治承四年、文治元年、建久元年の三つの時期に焦点をすえながら、鎌倉殿誕生の過程を描く。この年代記風の叙述を通して、武家とは、中世とは何か、さらには日本とは何かにまで迫る。
これまでの中世研究の概略を抑えた談論と、頼朝や鎌倉にまつわる小話をコラムとして掲載。初学者にも便利な一冊。
内容(「BOOK」データベースより)
東国における反乱勢力として出発し日本初の武家政権を確立した鎌倉殿・源頼朝。以仁王の令旨を継ぐ正統性の主張、坂東武士の主従の論理、そして王朝に対して時折示す纂奪政権としての武の脅威…。これらを使い分け、カリスマ性と「正義の戦い」を巧みに演出することで、自己の権威に磨きをかけ、武のシステムを日本に築き上げた。本書では、源平争乱から奥州合戦に至る最も濃密な十年を読み解きながら、卓越した政治的手腕を示した頼朝の実像に迫る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
関 幸彦
1952年生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科史学専攻博士課程修了。学習院大学助手、文部省を経て、現在、鶴見大学文学部教授