子供の頃に刷り込まれたイメージを払拭するのは意外に難しいので、上記のような日本を無意識のうちに思い描いてしまう人は未だに多いと思うが、そう言う人にお薦め出来る一冊である。本書は1980年代前半までの小論や講演記録を収めたものなので、内容的には決して新しくないが、おもしろそうなところだけ拾い読みしても、学校教育で知ることのなかった日本の一面が発見出来ると思う。
楽天的ロマンティシズムOK!おすすめ度
★★★★☆
宮台真司氏の網野史観への批判である「楽天的ロマンティシズム」というのはあながち的をはずしてはいまい。ただし、それまでの「悲観的」に流れるきらいのあった、「日本」および「中世」への網野義彦のまなざしが優しく、しかも力強く、それゆえとても魅力的だったことは間違いない。
網野氏が提起した問題の検証をさらに進めていくことが重要なことであり、この本の中身は最終結論の押し付けではない。やはり、それまで「定説」化され、硬直した「表・裏日本」「単一民族幻想」「差別」への議論の幅を広げた功績はやはり大きいのではないか。
いささか、プチ権威になった印象を脱ぐいいきれないものの、「大権威」の頑迷さの方がより問題なんだから、そこはひとまず置いておこう。
歴史を語るときに「小説」を用いる傾向のある「オヤジ」たち(また、そうなってほしくない若者)に、是非手にとってほしい一冊。
概要
日本中世史の諸説に様々な疑問を提出した小論集。「平民の自由」「民衆の生活史」「東国と西国」「百姓」「海民」など、著者が現在も徹底して追及し、多くの成果をあげている、数多くの研究主題の原点が提示されている。常民文化研究所で著者に強い影響を与えた民俗学者、宮本常一に関する論考も収録。
著者紹介
1928年、山梨県生まれ。東京大学文学部卒業。日本常民文化研究所員、都立北園高校教諭、名古屋大学文学部助教授、神奈川大学短期大学部教授・同経済学部特任教授を歴任。主著は『日本中世の非農業民と天皇』『中世の非人と遊女』『日本の歴史をよみなおす』『日本中世の百姓と職能民』、講談社学術文庫に『東と西の語る日本の歴史』がある。