また、天皇の必要条件が父親を辿ると一人の人物につながる人物ということも理解できた。宇多天皇やその子の醍醐天皇のように、一度臣籍に降りた皇族が即位できたのもこのロジックによる。
女系天皇を認めるべきでないことが確信できる本おすすめ度
★★★★★
源氏が中心の本ですが、源姓の特殊性から必然的に天皇について論じられることとなります。
私称の「苗字」とは異なり「姓」は天皇から与えられるものであること、皇室には姓がなく姓の存在=臣下であること(賜姓臣籍降下)、姓は父系制的な血縁論理によって継承される名であり、姓を有する貴族が婿に入った場合苗字は妻の家名を名乗るが姓は決して変わらないこと、日本史上存在した8人の女性天皇が皇位に就いた後生涯独身を通したのは入り婿によって姓(=臣籍)が生じるのを恐れたためであることなどが冒頭で次々に明らかにされていきます。
その上で、源姓の特殊性、すなわち源姓は、「祖先すなわち源を天皇と同じうする」という意味であって、「たまたま臣籍に身を置く」准皇族に普遍的な姓であったこと、いったん源姓を得た後即位した宇多天皇の例をあげ、源氏は場合によってはいつでも親王に復することができる存在と認識されるようになったことが明らかとなります。私は昔、○○源氏など祖先たる天皇が異なる源氏が多数存在することにひっかかり、なんとなく源氏は「源」だから特殊なんだろうくらいに思っていたのですが、この本を読んでひっかかりが解消しました。
著者はこの後も特殊な姓である源氏を巡る様々な事実を明らかにしていきますが、私がもっとも興味をもったのは天皇を巡る以下をはじめとする著者の一連のコメントです。
「七世紀末に定められた「日本」という国号が、今日に至るまで一度も改められなかったということは、とりもなおさずその国王の氏姓が一度も改まらなかったということを意味している。」
「皇位というものは「家」の原理により、皇女が皇族男子を婿に取ることによっても継承することができるが、皇統というものは「氏」の原理、すなわちあくまでも「父系的な血縁原理によって」のみ継承される」
明治天皇が「帝国陸海軍の大元帥」となり、「本来「公家社会」の頂点にあった天皇が、「武家社会」の頂点にあった「征夷大将軍」の職務を継承したということ、それは真の意味での「天皇」の歴史、ひいては「日本」の歴史にとって、きわめて大きな悲劇であった」
源氏に興味を持つ人だけでなく、皇室や女子天皇論議に興味を持つ人たちにとっても必読の書であると思います。
将軍という存在の歴史的変遷がわかったおすすめ度
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日本人なら誰でも知っている将軍という存在。
そして小学校から高校まで、中世の日本の支配者は将軍と習ってきた。
しかし、歴史学の知見から見ると必ずともそうとは言えないらしい。
この書は帯の文句の通り、「日本の支配者は将軍ではなかった」というテーマに取り組んだものである。
高校までの日本史で疑問に思ったことの一つは「鎌倉時代と室町時代はどこが違うのだろう」というものだった。
経済・社会的な違いは高校レベルでも教えられるし、政治レベルでも統治機構や守護の権限の違いなどは教えられた。
しかし、鎌倉幕府と室町幕府、その将軍は同じなのか違うのか。
なぜ鎌倉幕府には摂家将軍や宮家将軍というものが存在するのか。
なぜ、傍系からでも源氏の後継者を持ってこなかったのか。それは北条氏の勢力だけで説明出来るのか。
この書を読むことによって鎌倉幕府・室町幕府・江戸幕府の将軍の違いというものがわかったような気がした。
どうも現在イメージされる将軍とは江戸幕府の将軍のイメージであるということだ。もっとも最近の将軍であるから当然かもしれないが。
源氏というのが特定の家に限らず、いつでも皇室に戻ることの出来る性であったことは意外な事実であった。
源氏長者とはなにか、将軍になった武家源氏と光源氏のような公家源氏の違いなども貴族社会であった平安時代から鎌倉時代へと武家に実権が移っていく過程を理解する上で役立った。
日本中世史に限らず日本史に興味のある人には是非一度読んでもらいたい書である。